ちらしのうらのせかい

特撮のことから日常のあれこれまで、気ままに綴っていきます

映画『アルキメデスの大戦』感想

浜辺美波可愛かった…!

すいません、ちゃんと中身の感想も書きます。。ネタバレも含みますので気になる方は映画鑑賞後ご覧ください。

 

櫂直という男

個人的には櫂直という人物を見ていて、仮面ライダーWで同じく菅田将暉くんが演じていたフィリップや、仮面ライダービルドの桐生戦兎に似た感じの印象を受けました。(数式の描写の影響もあると思いますが)

櫂直は数学を異常なまでに愛し、そのレベルは常に巻き尺を常に持ち歩いて目についたものを次から次に計測していくほど。そして大の軍人嫌いというかなり尖った人物。

かと思えば、留学のためアメリカへ発つ直前になって山本少将の依頼(巨大戦艦建造計画の再見積り)を受けに戻るほどの人情や責任感を併せ持つ一面も。一番は鏡子が戦争に巻き込まれたくないからだと思いますが...

また、長門の設計図を盗み見るために宇野大佐を部屋から追い出すように田中少尉に仕向けたり、盗み見していた設計図をズボンのベルトの背中側に挿して隠したり、設計図を細かく裁断して計算を手分けして行うなど、行動の大胆さや逆境にも折れずに立ち向かう姿も垣間見えました。

そして最後の項でも触れますが、最後の平山中将とのシーンを見ると等身大の弱さも持っている。超人的なように見えて実はとても人間臭い人物であることがわかります。

 

櫂少佐&田中少尉コンビ

櫂の人並み外れた能力もさることながら、それを約2週間そばで支えてきたのは他ならぬ 田中少尉です。

田中少尉自身はで上下の礼儀にも厳しいいわゆる堅物タイプ。櫂に会って最初の方は全く反りが合いませんでした。それが成り行き上少佐として入隊した櫂のサポート役となり共に行動していくうちに、だんだんと櫂の実力や、目的のためにあきらめないひたむきさに敬意を表するわけです。

車の運転をしたり、ご飯のお世話をしたり、上官との連絡をとったり、宇野大佐を部屋から連れ出したり...と甲斐甲斐しく働いているその姿からは強い健気さを感じます。特に自分の歩幅で計測をしたメモを櫂に渡すシーンは、2人の距離が縮まってコンビ感が出てきた感じがあってグッときますね。そしてこのコンビを主軸にまた続編を見たい自分がいます...!

ちなみに特別監査室での「まずは飯を食え」というシーン、数少ない微笑ましいシーンだなと思って見てましたが、パンフレットによると菅田くんと柄本さんのアドリブだそうです。

終盤のどんでん返しと鑑賞後に残るやるせなさ

櫂が巨大戦艦建造推進派の見積もりの偽装を暴き、めでたしめでたしとなるかと思いきやそこで終わらないのがこの映画の面白いところ。

平山中将により過小見積もりの理由が「安い見積もりで敵国を油断させることにある」ことが告げられると再び風向きは巨大戦艦建造決定に傾く。

そこで櫂が平山中将の戦艦の強度に問題点があることを見つけ出し、平山中将はそれを認めて自身の戦艦案を撤回。その場は空母に決定する。

 

思いました。櫂のここまでやってきたことが報われてホッとする自分がいる一方で、それでは冒頭の大和沈没シーンに繋がらないのでは...?と。

 

その後、平山中将から海軍技術研究所の倉庫に呼び出された櫂。そこで平山案の20分の1の模型を見せられ、「強さの象徴となった戦艦(大和)が沈むことで諦めの悪い日本人の戦争への希望を断つのが本当の目的」という旨を告げられる。

それだけでなく、「あれだけのものを自分で図面に起こしたんだ。正直言うと作りたいだろ?」みたいなことを言われるわけです。この展開はなるほどと思いました。

平山の論が本心から来るものかどうかは定かではありませんが、ロジカルな面と技術者としてのロマン的な面の双方から選択を迫られた櫂は、前述の平山案の問題点を考慮した計算式を渡し結果的に戦艦大和は完成することとなります。

 

そしてラストの出航する大和を見て涙する櫂の姿には、戦艦の製造を止められなかったこと、自分の設計した戦艦を実際に見ることができたこと、外部の人間でありながら協力してくれた鏡子や大里さんへの申し訳無さなど複雑な気持ちが入り混じっていることが想像に難くありません。

 

鑑賞後には良い意味で期待を裏切られた爽快感と、冒頭シーンとラストシーンから来るなんともいえないやるせなさが残りました。

「数字は嘘をつかない」と言っていた数学者が最終的に「嘘をついた数字」を肯定してしまった。世の中には数字だけでは割り切れないものがある。そういった歪さを考えるのもこの映画の奥深さの1つだと思います。